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  3. HEADセミナー「思考力の育成と評価〜論述型試験 フランスの大学入試バカロレア試験の事例から考える〜」を開催しました《2018/10/12》

大阪大学 高等教育・入試研究開発センターでは、10月12日(金)に、大阪大学吹田キャンパス最先端医療イノベーションセンターにて、HEADセミナー「「思考力の育成と評価〜論述型試験 フランスの大学入試バカロレア試験の事例から考える〜」を開催しました。(なお、本セミナーはフランス教育学会の共催をいただき、学会の研究懇話会を兼ねることとなりました。)

セミナーでは講演に先立ち、川嶋太津夫 大阪大学高等教育・入試研究開発センター長より日本の大学入試改革の状況について概説し本セミナーの主旨説明が行われた後、田川千尋 同特任講師よりフランスの高等教育の概況について、また、今年度行われた大学入試改革および2021年にかけて行われるバカロレア試験の改革の概要が説明され、大衆化を背景とした現在のフランスにおける高大接続の課題が示されました。

これに続き、以下の2講演が行われました。まず、細尾萌子 立命館大学准教授により「バカロレア試験で問われる思考力とその育成:高校の理系・文系科目の実践例を通して」とのタイトルで、バカロレア試験の実施、評価方法、これに向けた高校教育制度、高校における教育実践例の紹介がありました。次に、「バカロレア入試哲学試験およびこれに向けた指導について」とのタイトルで坂本尚志 京都薬科大学准教授より、バカロレア入試哲学試験の内容と、哲学科目を通し育成されることが目指されている論理的思考力がどのようなものであるかの紹介がありました。指定討論には上野佳哉 大阪府立布施高等学校校長をお迎えし、高校の立場から高大接続のために大学に期待されていることを述べていただきました。

本セミナーを通し、フランスでは論理的思考力の育成が「市民性教育」の一環として各科目の中で意識されながら行われていること、各科目の中で初等教育から段階的に行われていることが明らかになりました。具体的には文章記述に関し、初等教育から論理的文章の記述の訓練が作文教育のみならず全教科で重視されているとのことでした。思考力と表現力をはかるための記述式の導入およびその後大学教育におけるこれらの力の育成にあたっては、高大接続の視点にとどまらず、かなり広い視野で連携をし各課程における段階的な取り組みを行うことが課題であると思われます。

セミナーには大学教員および高校教員を中心に51名の参加がありました。質疑応答では多くの質問が寄せられ、本テーマへの強い関心が感じられました。ここで明らかになった課題を踏まえ、本センターでは引き続き同様のセミナーを開催することで議論の場を提供したいと思っています。